26.もう一つの工務店
2021年4月30日
家の事で困ったらコイツしかいない。
私 『もしもし。ちょっと聞いてよい?かな?』
同級生 『なした?』
私 『ごめん、契約に関すること。』
同級生 『はいよ』
答えてくれた。有難い。すぐさま電話をかけた。
同級生 「おい、いきなり電話かよ!?」
私 「ごめん。」
同級生 「まあ、なんともねぇけどよ。で、何した?」
私 「実は社長盲腸で突然入院になって、契約のハンコ押せなくなって…。」
同級生は大笑いした。
同級生 「何だ、今度はそれか!何だってな、ホントよぉ。」
同級生は工務店を営んでいる。社長は大丈夫であると感づいての「何だって」といった程で話を聞いてくれたのだろう。
さっきまで担当者さんと話をした内容を伝えた。契約書の押印を社長よりも先にするということを。
一言、返ってきた。
同級生 「それはおかしな話だ。そんなバカなことあるか。」
同級生 「いいか、契約書によ、印紙の上に自分の印と会社の印が両方押されるんだよ。それで互いに契約しましたっていう事。目の前で通常やるもんだよ。てかよ、先にお前達の印が押されたあとで後から会社の印?あり得ないだろ、それで工務店から内容書き換えられてたらわかんねーだろ。」
ああ、そういうもんなんだと思った。契約書を見た事がなく想像すら出来ないけど、言ってることはわかった。
軽く考えて押せるハンコでないことは。
同級生 「その担当者が金庫を開けて、押すってことはできねーのか?どんな立場だ?」
私 「次期社長と言われてる。」
同級生 「開けれる気がするけどなー。まあ、いいけどよ。後は契約書の原本をコピーしてもらうとか、一筆書いてもらうとかか…?でたらめな契約結んだらダメだからな。」
教えられつつ、諭されつつ電話を切った。
契約印をうっかり押してしまう前に踏み止まって正解だったんだと分かった。
次の朝、夫にこの同級生の言葉を伝えた。
だが、夫はなかなか理解してくれなかった。
2人でどうするか揉めてると担当者さんからLINEがきた。
担当者さん『昨日はご心配をおかけしまして誠に申し訳ございませんでした。弊社で問題解決に至りましたので、明日予定通りご契約の程、よろしくお願いします。
( ゚Д゚)
正直、ちょっと待ってくださいよ。と、突っ込みたくなる。
我々があれだけ問題視した時間と徒労は何だったのか・・・・。
2021年5月2日(大安)
事務所には担当者さんと売主さんが待っていた。社長不在の中、今回は担当者さんが社長の代わりを務める。
売主、買主の間で土地売買契約書が交わされる。
初めて会った売主さんだったが、長く共にしていたような気がする。長い道のりの中、意識していた相手だったからだろうか。
売主さんは朗らかなオープンな方で、これもまた良い出会いだった。
売主さんの生まれ育った土地。ご両親が他界し取り壊してしまったが数年前まで建っていた白い大きなお家の写真を見ながら担当者さん、売主さん、私達夫婦は話す。
夫 「大きな家だったんですね。」
売主さん 「ええ。」
私 「お花がありますね。」
売主さん 「おふくろが花が好きだったもので。」
夫と私は目を合わせた。
私 「お花植えるのもいいね。」
夫 「うん。」
売主さん 「もう、私の土地じゃあないんですね。ここには入られないんですね。」
私 「いえ、いつでもお越しにきてください。売主さんなら大歓迎です。」
売主さん 「ありがとうございます。」
担当者さん「売主さんのこの土地を今度はKさん(私達の苗字)達が継承していって下さい。」
私達は、はい。と答えた。
無事土地の売買契約が終え売主さんが帰り、次なる契約。
同日。
施主、工務店の工事請負契約が結ばれる。
いつになく、担当者さんと私達夫婦3人はリラックスした雰囲気であった。
長い契約書を一句一句読み上げ、私達に聞かせる担当者さん。
それでは、と押される互いの印鑑。
しみじみと契約書の印紙におされた押印を見つめた。この日を噛みしめようと思った。
冗談を言い合い、3人は穏やかな中にいた。
何度、事務所のこのテーブルを3人で囲んだだろうか。この時間は近いうちにもうないんだと思うと、このときを永遠に閉じ込めておきたいと考えてしまう。
2021年5月3日
契約から夜が明けて、同級生にLINEをした。
私 『昨日、無事に土地の売買と工事請負契約が終わりました。ありがとう、相談のってくれて。聞いていた印紙の割印、重みを感じて眺めていました。家って、いいな😊』
同級生 『よかった。頑張っていい家建ててな😊』