38.色んな情があるならば
2021年9月22日(大安)
上棟式が行われた。
建築が棟上げというところまで進んだ時、これからも家が無事に建つことを祈願する、式。
昔からの習わしで、女性である私は入れないという決まり事がある。夫と工務店の方々が家の中に入る。私はひとり玄関のポーチで中の音を聞いていた。
同級生の言葉を思い出す。
(同級生 「施主が女だったらどうすんだ?」)
確かに。
でも神様怒らせて、家造りに災難が起きても困るので従う。
(´-ω-`)…神様、おねがいします。
2021年9月29日
会社の健康診断があったので、仕事の途中に抜け出し会場まで向かおうと自分の車にのりこんだ。
出発しようと駐車場内を走る。
(いた!!嘘っ!?凄い偶然。)
担当者さんの車が敷地内に駐車してあった。
左に急ハンドルをさせて、隣の隣に駐車させた。
(体の反応、早っ!)
車の発見にも驚いたが、自分の動きにも驚く。
慌てて建物内に戻る私。
\(゜ロ\)))) タッタッタッタ…
二階を駆け上がったところで担当者さんの姿を見つけた。
あえて声をすぐかけずに少し離れてスキップしてみた。
この時、ここが自分の職場である事は少し忘れている。
♪(((@^^)/ 気づいて!
少し間を置いて。
にこぉ…(´^ - ^`)
こっちを向いて笑顔を見せた担当者さん。
(*´▽`*) わーい
担当者さんの隣に飛び込む。
担当者さん「タッタッタって軽快に上がってくる足音、たぶん〇〇さん(私の名前)だなって思いましたよ。」
私 「びっくりしました。本当に偶然に駐車場を通りかかって車、見つけました。」
担当者さんは高らかに笑いながら言う。
担当者さん「テレパシー。」
本当、そうとしか思えない。
2021年10月2日
担当者さんと2人だけで事務所で打ち合わせ。
私 「担当者さん。」
担当者さん「はい。」
私 「以前、申請書についてどこまで許されるかの話をした事がありましたよね。」
担当者さん「・・・・ああ、ええ。法律上許される範囲の…。」
私 「私は心配してます。他の方のように担当者さんがその道に行ってしまわないかを。」
私が他から知った話だが、申請書というものを作る際に誰がどこまで関与するかで揉めるケースというか問題として上がる事が世の中にはあるという。
私 「これまで担当者さんの名前が、そういった事に出てきたことはありませんか?」
担当者さん「ありません。」
良かったと肩をなでおろした。
この先、何処からか聞いたこの話が担当者さんの身に降りかかるのではないかと心配して、実はずっと心の中で思っていた。
(でも、あまりダメとか言える権利は私にはない。)
(ないけど・・・・。)
私 「担当者さんの名前に傷をつけないで。ダメですよ。担当者さんはこのまま真っさらでいてください。」
この言葉なら言ってもいいと頭に浮かんだ。
担当者さんの成功を祈る言葉。せっかく出会った大事な担当者さんの名前に傷をつけたくないという言葉なら。
担当者さん「心配して頂き…ありがとうございます。工務店として直接関わりあった事でもない限り、触れないと考えてますので大丈夫ですよ。」
真剣に伝えて良かったと思った。
もし、どこかで担当者さんの名前が悪い意味で出てきてしまったら、私は本当に泣きそうになってしまうと思う。
家造りの打合せがある程度進んだところで。
担当者さん「これを見てください。」
担当者さんはパソコンの画面に、サイトを表示させた。
担当者さん「工務店の新しいホームページです。」
私 「おお!」
WEBの作成を手掛けてる知り合いに作ってもらってる所だとは聞いていた。
担当者さん「まだ完成ではないですけど……どうですか?」
私 「ここが…分かり易くていいですね。」
担当者さん「お客様目線でご意見が欲しかったので、ありがとうございます。これからは”抜け”がないようにしていこうと思います。」
私 「抜け…?」
担当者さん「ホームページを見て来られたお客様に大したことないとガッカリさせないために、私自身”抜け”がないよう気を引き締めて……。」
これまで担当者さんの家造りで抜けていた事をブログで書き綴ってきたので、その事を指しているのがわかった。
私 「・・・・。たぶん、抜けたまま変わらずにいくと思いますよ。」
笑顔でポツリと言うと、笑いながら目を大きくさせて担当者さんは返した。
担当者さん「えっ!?」
私 「きっと抜けがまたあると思いますが…担当者さんはそのままでいいてください。」
担当者さん「またまた~、頑張りますって。」
もう1年以上も向かい合った事務所の大きなテーブル。
今日は冗談交じりな笑みを浮かべて2人は座っている。
2021年10月16日
今日は建築中の現場で担当者さんを挟み、電気屋さんとコンセントの位置決めがあった。
私 「施主です。よろしくお願いします。」
担当者さん「では、こちらから回って見て行きましょう。」
担当者さんの誘導を受けながら、まだ柱むき出しの家の中を3人で歩いた。
あちらこちらで作業している大工さん達がいる。
工具や建材が散らばり足元もまだ未完成なため、気を付けて歩く。
担当者さん「今、〇〇さん(私の名前)が立ってる位置が丁度、寝室の入り口です。」
(なるほど…。)
私は自分の立った位置から奥の窓や天井を眺めた。
大工さん 「いや、そこ違う。入口はこっち。」
(!!)
近くにいた大工さんが突然入ってきた。大工さんの指し示す場所を見つめた。
(あ。…うん、そっちだ、入り口。)
自分でもわかった。
担当者さん「え!?あ、そうでした。ここはウォークインの側の通路の所ですね。入り口はそちら側の、そこの…。」
大工さんを交えて大笑いした後、担当者さんは大慌てで補足しながら説明をはじめる。
早速、いつもの”抜け”の担当者さん。
この間の宣言は何だったのかと突っ込みたくなる。
って、大笑いしたけど、心の中で思ってる。
(頑張って。)
私はいつでもあなたを応援してる。心配もしてる。
あなたが工務店の人間として素晴らしいものに出来上がっていくのを何より楽しみにしている。
10月2日の事務所であなたが言ってくれた言葉。
(担当者さん「私は幸せ者です。」)
私の為に言ってくれたと思う。
(私の心にあるなんとも言えない感情。)
(口に出したくないような出したいような感覚。)
色んな情があるならば、私と担当者さんの、これは何というものなのか色んな方に聞いてみたい。