私の家ができるまで

新築建築までに起きた出来事 

46.車のエンジンがかかるまで

                                                                  

2022年1月25日

現場にやってきた。

今日は仕事の時間給をとってきている。用事が終わり次第戻りますと職場には伝えていた。

(1、2時間で戻れるだろう。洗面台のパネルの位置だけ見れたらだいだいいいはずだから。)

 

朝の身支度に時間がかかったりで予定の到着時間より遅れてしまった。

向かう途中で担当者さんから電話がきた。

 

担当者さん「今日来ますよね?私待っていましたが別件が入って現場離れますが、いいですよね?」

私    「そうですね…出来ればいてください。なんだかんだ担当者さんを頼りにしてるので。」

無理だろうなとはわかっていたが、いてほしくて口から次いで出てしまった。

担当者さん「そうですね……。わかりました、いますね。」

 

(ウソ!?別件あるのに残ってくれるなんて…。やった!!

 

 

現場に着くと担当者さんはいてくれていた。

(^^)わーい

棟梁と仕事の話をしている様子の担当者さんに近づいた。

担当者さん「〇〇さん(私の名前)、ここの所なんですが…。」

私    「はい。ああそれは…。」

 

建築中の工具や資材が散らばる室内を担当者さんと歩いた。

今日は作業する人も多い。

電気の配線を確認する人、外で塗り作業を行う人、キッチン下に潜り込んでる人、ドリルを打つ人・・・・。

 

(凄い多いな、今日は。持ってきた差し入れの飲み物足りないかも。)

 

今日は洗面台の出来具合を見に来た。

洗面台の前に立つ。選んだ12角形の鏡が思った位置に付き、左右のライトのバランスもいい。何より、棟梁が仕上げてくれたパネルが美しくはめ込まれている。

 

(棟梁、凄い。美しい出来上がり。)

(打合せ通り、全体のバランスも良い仕上げだ。クロスもマッチしてる。)

 

(゜-゜)…ん?

 

とんでもない物を見つけた。思わずこう叫ばずにはいられない。

 

私    「担当者さーん!!」

 

・・・・・。

返事はない。

 

作業の方 「担当者さんなら、あっちにいるよ。」

外を見ると担当者さんは車で電話中のようであった。

 

数分後こちらに向かって歩いてくる担当者さんに叫んだ。

私    「担当者さん、これ、見て!!」

担当者さん「ん?」

洗面台にあるコンセントとスイッチの為に開けられた穴を指さした。

私    「位置が違う!!指示した位置になってない!!」

担当者さん「・・・・。」

私    「指示した図面は!?」

担当者さん「・・・・。確認します。」

私    「私が持ってきた方が早い。今からアパート戻って取ってきます。」

 

 

40分後、現場に図面を持って到着した。担当者さんの車いなかった。

電気屋さんに見せた。

現場に残っていた棟梁と大工さんにも見てもらった。

私    「これです。この位置です。しっかり書いて、担当者さんには間違いなく伝えた。」

電気屋さんと棟梁、大工さんの3人はなるほどといった節で話し始めた。

棟梁   「パネルこのままで、両壁クロス剥がし直して、コンパネは…。」

大工さん 「そうすればこっち、こうなりますよ。」

電気屋さん「配線、伸ばします。」

直す手筈が進んでいく。

(直せそうなんだ。良かった。)

私    「・・・・。棟梁…すみません、両壁直したら、この綺麗な仕上がりのようにはいかなくなってしまいますか?」

棟梁   「大丈夫です。この通りで仕上がります。」

この言葉に胸をなでおろした。

私    「お願いします。」

 

 

夕方、どうなったのか心配になり仕事を終えてからまた向かった。

棟梁と大工さん、そして内装屋の社長もいた。

(お!!社長だ!!)

イケメン社長の思わぬ登場に私はテンションアップ。

洗面台に向かうと棟梁が歩み寄ってきた。

棟梁   「直しましたよ。この位置ですね?」

こっちの心配を察知して、棟梁が声をかけてくれる。まるで施主の心が分かってるようだった。

私    「はい。この位置です。ありがとうございました。」

 

仕事を終えつつある棟梁、大工さん、社長と笑いながら写真を撮りあいつつ、話をしたりして現場を後にした。

 

 

2022年1月26日

夕方、現場に向かう。

担当者さんも現場にいるという。

 

(現場で担当者さんにこのドタバタの原因をもう一度追及しようか、どうしようか…。)

 

強く言わなくても、何かしら言おうと思っていた。

担当者さんの姿を現場で見かけるとすぐ連れ立って、洗面台へ。

そこには昨日アパートから持ってきた図面も置かれていた。

私    「担当者さん、これ見て。」

担当者さん「はい。」

図面を覗き込む担当者さんと私。

私    「私、ちゃんと書いてる。これを見ながら説明したのも覚えてる。」

担当者さん「記憶にはないんですが・・・・この赤ペンの字は確かに私が書いたものです。」

私    「やっぱり。抜けてた。」

担当者さん「申し訳ありません。」

 

ふと、現場で仕事をしいてる棟梁と大工さんのことが気になった。

(今回、大工さんや電気屋さん、内装屋さん…この人達が苦労して修正してくれた洗面台。)

(何も言わずに、今現場で私と担当者さんが笑って話しているけど、直してくれた現場の人達はどんな思いで黙々と作業をしているのだろう…?)

 

💡!

 

閃いた。

棟梁の元へ駆け寄ってお願いした。

私    「担当者さんとこの洗面台の前で写真撮ってもらえませんか?」

私の撮影に担当者さんは驚いた様子で返す。

担当者さん「私と?ですか!?」

棟梁   「昨日、みんな撮られてる。堪忍しれ。」

棟梁が笑って、降伏宣言を促し私に渡されたスマホを手にして向かってきた。

私    「記念にこの洗面台の前で撮りましょう。担当者さんが間違えた洗面台のところで。担当者さんはこれを持って。」

担当者さん「はい?」

渡された赤ペンの入った洗面台の図面を手にする担当者さん。

私    「間違えたこの証拠の図面とともに撮ります。」

この言葉にわっと現場の棟梁と大工さんが笑った。

棟梁   「そりゃ、いい。図面掲げて記念撮影か。」

担当者さん「わかりましたよ。撮りますよ。」

 

不貞腐れ気味に返す担当者さんだけど、写真に写るその顔は満面のいつものくしゃっとした笑みで、本当に素敵な笑顔だなって思った。

担当者さんがこうして施主に叱られたのなら、現場で苦労したみんなの気持ちが軽くなるんじゃないかなって思った。

 

 

 

事件はこの後、起こる。

 

夜6時。現場の明かりを消し、担当者さんと私は2人帰ろうとした。

 

棟梁たちはすでに現場から立ち去っていた。

 

一度は車に乗りかけたが、また担当者さんと会話が弾んでしまった。

 

私は自分の車の運転席に乗り、エンジンを一段階まで回していた。

 

担当者さんは覗き込むように運転席の窓に顔を出していた。

 

一時間ほど経っただろうか。。。。

 

 

私    「すっかり遅くになってしまいましたね。では、帰ろう、担当者さん。」

担当者さん「ですね。」

 

私    「あれ!?」

担当者さん「?」

私    「エンジンかからない。」

担当者さん「マジっすか!?」

 

中途半端にエンジンを回していたため、バッテリー上がりを起こしてしまった。

 

担当者さんは運転席に乗ってくれて、エンジンがかからないか何度かチャレンジしてくれた。

 

担当者さん「かかりそうな気もするんですけどね…。〇〇さん(私の名前)、私家まで言ってケーブル持ってくるんで。もし、待ってる間エンジンがかかったら、連絡ください。じゃ、取ってきます。」

 

 

結局エンジンはかからなかった。

 

数十分、担当者さんの車が再びやってきた。申し訳なくて、言葉を探す。

 

私    「すみません、さっきかかりそうって所まできたんですけど、やっぱりダメで……。」

 

そう言うと、担当者さんはにこっと笑った。

 

そのまま黙ってケーブルを自分の車と私の車に繋げる。

 

黙々とエンジンがかかるまでを行う担当者さん。

 

担当者さん「いいですよ。エンジンかけてください。」

 

私    「!!はい。」

 

ブルルッ!といつもの音がした。

 

担当者さん「このままエンジンを切らずに走ってください。アパートまででなら大丈夫でしょう。もし、途中で寄り道あるんでしたら、エンジンはかけっぱなしで。切っちゃダメですよ。」

 

私    「はい。すみません。おかげで助かりました。」

 

運転席に乗り込もうとした担当者さんは私にもう一度振り返った。

 

担当者さん「いいですか?私行きますよ?」

 

その言葉にうん、大丈夫と頷く。

 

 

本当に優しい、担当者さん。

 

ありがとう。

 

 

次の日

担当者さんからLINEがきた。

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参りました、担当者さん。

 

 

 

 

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