私の家ができるまで

新築建築までに起きた出来事 

9.平屋

                                                                  

2020年10月

前回の打合せ以来、担当者さんとは少しだけ警戒心を働かせながらのやり取りをしていた。尚且つ正直にぶつけた電話の件を後悔したりで、時折電話やメールでこちらから和やかな会話を運んでみたが相手からは感触が薄かった。

大分、施主と工務店は離れ離れな関係になってしまったと感じていた。

 

銀行の事前審査も無事におり、担当者さんと打合せ。

農振除外と農地転用を待つ間、間取りや外壁などを決めて、2つの許可がおりたらすぐに建設へ取り掛かかるため話だけは進めていく形になった。自分が知り得た、最短で順調な許可が降りるまでの情報を現実に結び付けいければいいなという淡い期待を込めて担当者さんに聞く。

 

 私    「農振除外の結果が出るまで2、3ヵ月といった所でしょうか?」

 

担当者さんから「そうですね。」とさらりと返ってきた。

半年から一年かかるとネットの情報ではあったが、やはりそうではないみたいで良かったと肩をなでおろす。あれは最悪の場合か地域によるものなんだと解釈する。これなら精神的負担もあまりないし、それから農地転用の許可申請で1ヵ月だろうし…そんなに時間はかからない。

 

 間取りなどについて話合いの途中の事、担当者さんから唐突に言われた。

 

担当者さん「例の土地は広いですし、平屋というお考えはあったりしませんか?」

 

私達はキョトンとする。

平屋を考えたことがないわけではないが、これまで他のハウスメーカーなどで聞いた話で平屋は高い事を知っていた。私達の予算ではオーバーしてしまう。

 

 

私    「平屋も考えた事はあるんですが、高いので…。ちなみに、こちらでは平屋だと坪単価いくらで出来ますか?」

 

担当者さんはそうですねぇといった節で、

 

担当者さん「坪単価、税別50万でいいですよ。」

 

私達は「え?」と驚き、「いいんですか!?」と確認した。担当者さんは「いいですよ。」と言いながら「じゃあ、上げますか?」と冗談交じりに返す。

私達は全力で首を横に振り、二階建てと同じ坪単価で平屋を作ってもらえる事になった。担当者さんも初の平屋だと言っていたので特別感もあり、浮かれた。

その日の帰り道、夫婦2人は大いに喜び合い車内は大盛り上がりである。最近、こんなに楽しかった事があったかぐらいの勢いの2人。平屋が据え置きの単価で作ってもらえるなんて今までなかった。

 通常、平屋は一般的な二階建ての坪単価に比べ、1割ほど坪単価がアップする。これまでの建築会社さん達に言われたのは、家の屋根と基礎部分が二階建てに比べて面積が多い為に坪単価が上がるという事だった。

夫の希望していた平屋がこの金額で叶うなんて信じられないと思っていた。良い工務店さんに出くわした。それとも担当者さんの心意気なのだろうか。

 

 

数日後、担当者さんに家づくりの事で電話で質問した。農地の緩衝地のことなど聞いた。

担当者さんは実は頂いた電話で申し訳ないんですが…と言いながら。

 

担当者さん「坪単価、50万でいいって言ったんですけど、やっぱり52万にしてもらってもいいですか?いえ、51万でいいです。」

 

あれから計算したら坪単価50万では無理のようだったという理由だった。やっぱりそうだよねと思う。ショックですが一応夫に聞いてみてからOK出しますねと伝えると。

 

担当者さん「いえ、やっぱり、50万で大丈夫です。」

 

と元に戻ってしまったので、私は担当者さんに慌てて促した。

 

私    「まず、主人に相談してみてからにしてみましょ。ね?私聞いてみるから。」

 

 

今になってもおかしいと思うが、私はなんで担当者の味方になって坪単価51万へ誘導したんだろうか。

しかも、深夜帰宅した夫に話すと夫も意外にもあっさり受け入れてた。

夫    「今後、何かと面倒かけたりする事もあるかもしれないし、お前の心配事とか質問も多くなったりするかもしれないから、上手く合わせるようにしよう。

そんな風に言いながら夫は担当者さんにメールでOKですと伝える。

 

担当者さん『誠に申し訳ございませんでした。以後、このような事がない様、精進して参りますので、何卒よろしくお願いします。』

 

担当者さんから朝一で深々と謝罪のメールがはいる。

私はいい関係で家を造りたい。このやり取りは担当者さんとの信頼関係を得られる機会になると思ってメールを返した。

 

私    『主人、即答で了承でしたよ。あまり気になさらないでください。これからも夢の家造り、宜しくお願いします。』

 

『ありがとうございます。夢のマイホームに向けてサポートさせていただきますので、これからもよろしくお願いします。』

 

とても温かいやり取りに、満足感でいっぱいだった。

今でもこの坪単価の小さな事件は面白エピソードのひとつとして、夫婦で話題に上がる事がある。

一階も二階も全く同じ形の総二階建てしか建てられないと思っていたが、この工務店さんに出会い二階部分が小さめの住宅も可能だという時点で私としては満足だったが、まさか平屋が建てられるとは思ってもみなかった。

 

「平屋は贅沢ですよ。」

担当者さんがよく言う台詞。この言葉を聞く度に、贅沢だと言う割には、他所(よそ)の工務店などと比べて遥かに安く建ててくれるなぁと台詞と現実の違いに違和感を感じてしまうが、贅沢とはお金に限ったことでもないかもしれない。

 

  

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