私の家ができるまで

新築建築までに起きた出来事 

2.住宅説明のための事務所訪問

                                                                  

 2020年7月

初の打合わせ。電話で話をした担当者の男性らしき人物が、玄関先に出て待ち構えてくれていた。待ってましたよと言わんばかりで、なんだか嬉しく感じる。

中に入ると社長もいて、ほっと安心する。

担当者さんが説明を始めるとすぐに、社長が話に入り込んできた。我が社のアピールを色々してくれ、歓迎ムードなのが嬉しい。マシンガントーク中の社長を「まず、今説明を受けてから!」と一撃した担当者さんとそそくさと離れた社長を微笑ましく感じた。面白い工務店さんだ。

住宅の設備、柱の太さ、換気システム、叶えらる建物の形、追加費用のかかる部分など色々聞いた。換気システムが第一種なのが希望とは違ったが、ダクトレス式であるためメンテナスも定期的な簡単な掃除で良く、部品交換なのどの維持費についても大きな額でないようで、第三種でなくても良いかなと思った。どんどんと話を聞くにつれ、ここの工務店で建てる気持ちが膨らんでいった。

住宅説明の中で、ZEHなるものを担当者さんが結構熱く解説してくれたが、その時はあまり重要性を感じず、今一ピンとこなかった。

打合せの終盤、担当者さんが突如(とつじょ)真顔になり、私達を見てこう聞いた。一瞬空気が静まり返ったような雰囲気の中、落ち着いた声であった。この質問は忘れられない私の大事な出来事となる。

 

担当者さん「どこの…何をもって建てるか決めるのは、設備だったり、予算だったり色々あると思うんですけど、Kさん(私達の苗字)の落としどころは何ですか?」

 

聞かれた夫が、どんな回答をするのだろうと、その顔を隣で見つめた。

夫    「予算と、あとは…噂ですかね。」

私は噂という回答にとても驚き、慌てて担当者さんに謝った。

私    「すみません。噂だなんて、バカな発言でして。」

軽く微笑んで返してくれたので良かったと思っていると、担当者さんは私の方を向いて聞いた。

 

担当者さん「Kさんの落としどころは何になりますか?」

 

振られたことに動揺と喜びが入り混じる。私には聞いてくれないだろうと思っていた。もちろん理想の家のため、あれやこれやのいくつかの要望はあるにはあるが、これといったものを考えた事がない。思考がフル回転する。何故かこの質問を答えられることをチャンスだと思い、早く言わなくてはと焦った。

 

私    「そうですね。予算と…、信用?信頼?この人に頼みたい!という事でしょうか」

 

その時の担当者さんの反応は、表情も返答も特にはなかったと思う。私はこの回答で良かったのかと自問自答気味だった。嘘ではないが、もっと大事にしているもの重要なものが他にもあるかもしれない。とっさに出した言葉だった。

 

 

打合せを終えた後、担当者さんから土地を見に行きませんか?と申し出をされ、私達は「はい。」と受ける。

事務所を後にし、担当者さんの車の後をついて私達は周辺の土地を7ヵ所ほどを見て回った。一つ、夫婦共に良いなという土地があり、夢への現実感が増す。

最後の土地を見終わった時、隣にいた担当者さんはおもむろに発言をした。

西の夕日が辺りを輝かし始めていた。

 

担当者さん「もし、他のハウスメーカー工務店とやり取りしているなら、全て切って下さい。その方が私達のためにも、Kさん達のためになると思います。」

 

担当者さんは私に真っすぐな目を向けて、そしてハッキリと言い切った。

ガツンと心に響いた。

その時私は決めた。この工務店さんがいい。

これは夫にも聞いてもらわねばと、少し離れていた夫を手招きして呼ぶ。

この工務店さんなら、私達のために力を注いでくれ、全てを受け入れ、良い家が出来る気がした。日が沈みゆく、きらめき出す大地の中のこの瞬間、たたずむ担当者さんと自分、向かってくる夫の光景が今でも焼きついて忘れられない。

 

 その時私は担当者さんの言葉に突き動かされ、とっさに答えた落としどころの回答の、「この人に頼みたい」という言葉が、本心なのだとわかった。

 

 

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