22.想いを伝える
2021年3月27日
事務所にいくと、慎重な面持ちで担当者さんは出迎えた。私の心境を察しているかのように。
緊張する。大切な家造りがかかっているから何としても伝えたい。
私はスマホのメモに書き出した自分の想いと考えを開く。
そしてLINEを開きペーストして担当者さんのスマホを鳴らした。
私 「・・・・あの、言いたい事を考えてきました。今から担当者さんにそれをLINEしました。まずは読んでもらえますか?そして話しをさせてください。」
私の顔を見つめたまま、黙って担当者さんは胸のポケットからスマホを取り出して指でなぞらえる。
向かい合う、うつむき加減の担当者さんの瞼。
眺めながら自分の心の中で小さく祈る。(上手くいってください。)
担当者さんの顔がスマホから私へ向いた。黙って真面目な表情をしていた。
担当者さん「・・・・ん。わかりました。」
私 「どんな風に思ってますか・・・・?」
担当者さん「〇〇さん(私の名前)を犠牲者にしておいて、家族を守るなんて事がおかしいということですね?」
私 「はい。」
担当者さん「私が言ったりしなければ、〇〇さん(私の名前)は考えずに済んだ。」
私 「はい。」
担当者さん「それを工務店として…どうなのか?と。」
私 「はい。」
私は今回、担当者さんから言われた例の家庭の事情の発言とその後の対応は工務店としてどうなのか、大人としてどうなのかと伝えた。
これが私が言える自分のフィールドを守るための精一杯の回答だった。
この時、担当者さんも私もしっかりとした言動は出せなくなり、ポツポツとお互いの心を確認し合ったようなやり取りをした気がする。担当者さんと少しづつ理解を深め合った。
担当者さん「この文章から、〇〇さんが本心で書かれたのを感じます。」
私 「文面がおかしい所もありますね。想うままに書きました。・・・・でも、伝わって良かった。」
ほっとして緩む私。
担当者さん「・・・・・。教わりました。私にこれを知らせてくれるためにここまでしてくれる。私にそこまでしてくれる理由はなんですか?」
私 「・・・・・。さあ、なんでしょうね。」
その回答に担当者さんは「?」という表情をする。
担当者さん「こんな事を言って、また傷つけないか心配ですが。」
私 「えっと、…少しづつお話しを出してください。ダメな時はSTOPかけます。」
担当者さん「私は、今回の私の家庭の事情について、喜ばしい事の分類だと思っていましたから…。こんな風になるとは思いませんでした。」
私 「正直、喜ぶという気持ちにはなりません。・・・・軽蔑しますか?」
担当者さん「いいえ。」
担当者さんがきっぱりと否定してくれたので心底ほっとする。
私は思い切って、本当の私の心の声を出してみようと思った。
私 「担当者さん、あなたの言った家庭の事情、私には一生わからないもの。」
と、軽く笑顔で言ってみた。
私の家族は夫だけ・・・・。
強がりじゃなく、本当のことだから素直に言える。
担当者さんは私の言葉を聞いて、それ以上何も言おうとはしなかった。黙って理解してくれたように見えた。
その後、2人の心が開かれたようになり、これまでの事を思い出し笑ったりして時を過ごした。