33.私にしか出来ない事を探して
2021年8月7日
事務所にて打合せ。
到着すると、担当者さんが玄関先に立っていた。
夫 「担当者さん、何してるんですか?」
担当者さん「一服してました。」
玄関にいる担当者さんに気にはかかるが、私からは何も聞かなかった。
(担当者さん、もしかして…。)
以下、本日の打合せ。
- 照明の種類と位置
- コンセントの位置
間接照明を家のどこにつけるか3人で話し合った。
この間、同級生から見せてもらった間接照明のお宅の写真がとっても気に入ったからだった。
私、夫、担当者さんの三者であれこれと希望が飛び交う。
私 「窓ガラスの関係からテレビの上は難しいから、ニッチにつけようかな。」
担当者さん「はい。ここですね。」
私 「ええ。いくらぐらいですか?」
担当者さん「そんなにかからないかと思います。」
私 「スイッチが集まったニッチの他に玄関のニッチも間接照明にして…。」
担当者さん「・・・・。お言葉ですが〇〇さん(私の名前)。」
私 「はい。」
担当者さん「玄関のニッチは見た目から付けるのはわかりますが、スイッチの所のニッチは意味ないと思いますよ。」
(; ・`д・´)えっ!なんですと!?
久しぶりに担当者さんの厳しめ意見が飛んできた。
私 「えっ・・・・!だって…それは…。」
負けず嫌いな私から反発心が出そうになる。
担当者さん「スイッチが集まった部分を照らしてどうするんですか?」
ズバッと言われる。
(。-`ω-)…むっ。
頑張ってこの位置へたどり着いた意味を説明。
私 「私のイメージですが、真っ暗な室内の中で、スイッチ集まった所が照らされていれば、必要な操作が暗闇の中でもすぐできます。何かとこのスイッチが明るいことで安心したり、暮らしが良い感じになるかと思ったんです。」
担当者さん「ですが、スイッチやそこにある画面は普段から光ってますよ。」
(=_=)
言い返す言葉、もうない。決定打を打たれる。
スイッチのニッチには間接照明は付けないことになった。
その後も話し合う中でのこと。
私 「これだと、ダメ。あなたはどうしたい?」
夫 「ここでもいいかなって思うんだけど。俺は。」
私 「えー、うん、そうかぁ。いや、ダメ!」
夫 「じゃあ、好きなようにせ。」
他愛のないやりとりだったと思う。
黙って聞いていた担当者さんが、少し笑ったような目をして言った。
担当者さん「相思相愛じゃないですか。」
たまにであるが、担当者さんがこんな事を言うことがある。
(・ω・)・・・・。
(担当者さんの心の中を覗ければいいんだけど…。)
担当者さんが通常の流れや状況の中で発言した台詞が、衝動的で不自然さを感じる事が度々ある。
が、何を想ってるか私にはわからない。
2021年8月11日
今日はとても疲れていた。担当者さんがUSBを取りにアパートに来る予定だったが、我慢しきれずリビングで寝てしまった。
ピンポーン。
インターホンの音を聞いて担当者さんが来たのはわかるが、頭と体をすぐに起こすのは割と大変だった。
担当者さん「こんにちは。」
私 「はい。すみません、疲れて眠ってしまって。」
担当者さん「そうですか。そうすれば今日はすぐ帰りますね。」
私 「はい。すみません。」
思わず出てしまった本心の一言。
担当者さんは笑顔で帰っていったが、これを後々まで引きずって毎日を過ごすことになる。
2021年8月16日
仕事の昼休みの時だった。
大事件が起きた。正確には起こしていた。
昨日の夜、うつらうつらと眠りに落ちそうになりながら見ていたサイトをうっかり担当者さんのLINEに送ってしまった。
なんのサイトか見ると、自分にとって非常にまずいものが含まれていた。
(;゚Д゚)
慌てた。
慌てて、こういう場合どう対処するのが常識的なのかわからず、思わず友達に電話で聞いてしまった。
私 「ちょっと、ごめん、教えて!」
友だち 「どうしたの?」
私 「間違って送ってはならないサイトを工務店の担当者さんに送ってしまった。ど、どうすればいい!?」
友だち 「ん?どうにもならない。」
私 「えー!困った。どうしよう。」
友だち 「下手に嘘を付け加えたりせず、間違いましたーでいいんじゃない?」
私 「わかった。ってか、軽蔑されたりしないだろうか?引かれたりしたら嫌だー。」
友だち 「普段からLINEしてたんでしょ?多分、〇〇さん(私の名前)だなーって感じに思うよ。」
私 「それは私だからしょうがないっか、みたいな事?」
友だち 「うん、そうだね。」
(´・ω・)ほっ…
本当にこの友達の私だからに救われ、何とか冷静にそして対処方法までわかった。
こんなバカな事件のために昼休み潰してくれて申し訳ない。
急いで担当者さんに電話して弁解をしようと電話する。
が、出ない。
代わりにLINEが返ってきた。
担当者さん『今日までお休みをいただいておりますので、明日ご連絡します。』
(えーーー!)
弁解のチャンスさえなかった。
私 『すみません。ホムペ、間違って担当者さんにも送ってしまいました。』
担当者さん『そうでしたか。ご連絡ありがとうございました。』
(冷ややかーーー!事務的に返されたー。)
クールな返答に不安感がさらに増幅された。
2021年8月17日
お昼休み、担当者さんに昨日のサイトを送ってしまった件で電話した。
(引かれていたらどうしよう・・・・。こんな事になるなんて。)
担当者さん「はい。どうしましたか?」
私 「あの、昨日のサイト送った件で…。すみませんでした。間違って担当者さんにも送ってしまったんです。」
嘘までいかない嘘を少し交える。きっと今ここで大事なのはあの大事件を小さい事柄にもっていくことだ。
そして相手から薄い記憶にさせることに話を進めていければ。
担当者さん「ああ、ええ。私に見てほしくて送ったのだと思ってました。」
私 「まさか!あの・・・・見ましたか?」
担当者さん「・・・・。いえ、後から見ようと思ってました。」
私 「良かった。」
とはいえ、既読がついてた事実から全く見てないとも言い切れない。もしかしたら担当者さんは気を使ってくれて嘘ぶいてくれてる可能性がある。
私 「いやー、何を送ってしまったのか、あれは何なのか私の記憶も定かでないような。あれは何だったんでしょうか?幻です、きっと。」
担当者さん「ええ、はい。そうでしたか。」
柔らかい口調の担当者さんに少しづつほっとしていく。
私 「もう、今日の打合せに行けないと思ってしまいました。」
担当者さん「何でですか!?大丈夫ですよ!」
高らかな朗らかな声が電話から響く。
安心した。
私 「引いてませんか?嫌われてたり…?」
担当者さん「してませんって。」
なでおろす。
今日の夕方の事務所での打合せを確認し電話を切った。
実は私の職場を担当者さんは知っている。
もう少しで仕事を終えようとしていた時、見覚えのある車を敷地内で見つけた。
(担当者さんの車!!)
職場の建物内に担当者さんを探した。
(いた!!)
思わず駆け寄ろうとして、引っ込んだ。何かスタッフの方とやり取りしていたからだ。
遠くの影からガラス扉越しに手を振ってアピールしてみる。
(気が付いて!)
担当者さんがちらりとこっちを向いた。
(わっ!)
((・_・)ぺこっ
(え!!それだけ?)
ショックだが、まあいいかと嬉しさのダダ洩れ状態で自分の仕事場まで戻った。
仕事を終え、ダッシュでさっき担当者さんがいた場所へ突進して行った。
(まだいた!座って待ってる。)
隣の席に滑り込むように座って話をした。
私 「担当者さん、これから打合せなのにここでこうしてて間に合いますか?」
担当者さん「大丈夫だと思いますよ。」
私 「仕事終わったので、事務所まで私すぐ向かうと思いますよ。」
担当者さん「はい。」
私 「5時頃とか、少し遅めに行きますね。」
担当者さん「はい。」
そっけない担当者さんだった。ずっとスマホを眺めながら話ていたし。
(???)
(人間機嫌が悪い時やそっとしてもらい時はあるもの。)
そう考えて、私は一旦家へ戻ると支度をして夫と車で出発した。
事務所到着。
担当者さんは今日も外で待っていた。
(また、待ってる。…やっぱりそうなんだな。)
立って外で待つ担当者さんの姿に心苦しくなってきていた。
工事中止の話の際、担当者さんにお願いした解決策がこれなんだろう。
(私と家族を近づけさせないために立ってくれてるんだ。)
雨がポツポツと降ってる時も、熱い日も。
担当者さん「遅かったじゃないですか!」
事務所に入るといつもの覇気ある感じの声が返ってきた。
私 「え!?だってさっき会った時5時頃って話ましたよ。」
担当者さん「え?そうでしたか。私、〇〇さん(私の名前)が家に帰ってる頃、丁度車で事務所に戻ってるころでした。」
私 「すみません、お待たせしてしまって。」
担当者さん「大丈夫ですよ!」
さっき職場で会った担当者さんと同一人物とは思えないほどテンションが違う。
私 「思わず手を振ってしまいました。でも担当者さんの反応ペコっと会釈でしたね……。」
これに顔全体をくしゃっとさせて笑う担当者さん。
担当者さん「仕方がないじゃないですか!他の方もいましたし、あの部屋でまさか私もわーって手を振る訳にもいかないですよ。」
そっけなかった理由がわかった。
さらにくしゃっと顔をほころばせる担当者さん。
担当者さん「舞い上がってんなーって思いましたよ。」
私 「思わず…。」
頭をかく私。
夫 「・・・・・。テンション高いな。」
ボソッと夫がつぶやいた。
担当者さん「〇〇さん(私の名前)、私と打合せの時はいつもこうですよ。」
つかさず、ズバッと担当者さんは言い放つ。
(・ω・)・・・・。
(まただ。担当者さんの発言、たまーに気になる。)
(・・・・。嫌は気はしないけど。)
打合せが進む中、担当者さんが身を乗り出した。
担当者さん「はい!なるほど!ええ、わかります。」
私 「良かった、通じて。そうです。ここが…。」
担当者さん「はいはい。そうですよね。私もそこは密集してると思ってました。」
紙面を覗き込むように乗り出し、目を大きく輝かせる担当者さん。
こういう瞬間があると、人との会話は楽しい。
この先も、この事務所であなたと家造りの話をしていけたら幸せなのに。
そんな寂しい気持ちになった時は、担当者さんの成功と他のお客さんが自分のようになってる事を考える。
(この先も、あなたと幸せの家造りをしていく人々で、この事務所の中が満たされますように・・・・。)
これが今の私に出来る最大の方法。
人には人の、自分にしか出来ない魔法があるかもしれない。
自分も相手も幸せになってゆく魔法が。